『二人のバレンタイン』
登場人物:松宮志保、岡田准一
本文:
「松宮さんはバレンタインに何をプレゼントするんですか?」
そうだった。
すっかり忘れてた。
バレンタイン…明日じゃない!
何も用意してないことに気づいて焦ったけれど、
壁にかかっているカレンダーを見てあたしはホッと一息ついた。
「ねぇねぇ、バレンタインに皆何あげるの?」
「あたしはチョコレートですよ。」
「でもチョコレートってありきたりなんじゃない?」
「そうかなぁ。」
「私はね…ネクタイプレゼントしようと思うのよ。」
「旦那さんにですよね?」
「あたしの彼、アクセサリー好きだから、ネックレスをあげようかと思ってるんです。」
女の子達がキャーキャー言いながらそんな話をしているのを、
あたしは左から右に流して聞いていた。
そして、そのうちの1人がさっきの質問をあたしに投げかけた。
「え…あたし!?」
「彼と付き合って結構長いんですよね?」
「今年はどうするんですか?」
興味津々に聞いてくる彼女達に苦笑しながらも、
こんなことあたしが言うのも何だかおかしいけれど、微笑ましく思えた。
「あたしはね、今年は貰う側なの。」
数年前。
まだあたしと准一が学生の頃。
あたしたちは付き合い始めた。
「志保」
付き合いだして初めてのバレンタインデー。
もちろんあたしは準備していた。
そして、クラスの違う准一を呼び出して、チョコレートを渡した。
「何?」
「これ、俺から。」
そう言った准一の手から何かが離れて、
綺麗な弧を描いて、あたしの手の中に納まった。
白い包装紙でラッピングされた、直方体の箱。
「ホワイトデーには、また別に返すから。」
「…これ、どうして?」
「今日、バレンタインやろ?」
「そうだけど…」
「俺からのプレゼント。」
「バレンタインって女の子が渡すものでしょ?」
「そんなん日本だけやって。」
准一の話によると、海外では男女関係なく、
好きな人にプレゼントを渡すのだという。
チョコレートを渡すのも日本だけだとか。
そういえば、准一って海外に住んでいたんだよね…。
やけに詳しいわけだ。
それからというもの、あたしたちは毎年交代でバレンタインにプレゼントを渡している。
今年はあたしが貰う番なのだ。
「でも、それもドキドキしていいですよね。」
「そうよ、たまには彼がくれればいいのにね。」
「あたしの彼はたぶん、そんなことしないだろうな。
面倒くさいって言うに決まってるもん。」
「いいなぁ、松宮さんは。」
皆が羨ましそうにあたしを見る。
いいだろ!って笑いながら言って、あたしは給湯室へ向かった。
コーヒーが落ちるのを見ながら、携帯をチェックする。
准一からの新着メールがあった。
それを読むと、顔がニヤけていくのがわかった。
『14日絶対空けといて。
仕事終わったらすぐ志保の家行くから!』
あたしは「了解」と一言打つと、そのまま送信した。
その後コーヒーを持って戻ると、
さっきの彼女達に冷やかされたのは言うまでもない。
「他に何か買うものあったっけなぁ。」
買い物袋を覗き込むけど、思い当たるものはない。
「さむっ」とマフラーで顔を半分隠して帰路についた。
鍵を鞄から取り出して、鍵穴に差し込む。
ガチャッという音を確認して、ドアノブを回すが…開かない。
あれっ…。
鍵閉め忘れてたのかな…。
もう一度鍵を開けて恐る恐るドアを開けた。
リビングからの光が暗い廊下を照らしている。
視線を落とすと、見覚えのある靴があった。
「准一…!?」
パタパタと足音をたててリビングへ急ぐ。
「おかえり」
キッチンから准一が声をかけた。
手にはお鍋とおたまを持って…。
テーブルには料理が並んでいた。
「これ、全部准一が?」
「ゴメンな、勝手に材料買ってきて、キッチン借りた。」
「ううん、構わないよ。
でも、あたしも買ってきたんだけど…ま、いっか。」
「着替えといでや。
そしたら夕ご飯にしよ。」
何年ぶりだろう。
准一が家に来てくれた。
何ヶ月ぶりだろう。
准一が料理を作ってくれた。
何日ぶりだろう。
准一と会えた。
毎日毎日メールとか電話をするなんて。
自信のない証拠だと高校の時に言われた。
今何してるのかなぁと思ったり、
今度いつ会えるかなぁと思うことが恋愛の楽しさだと。
当時准一とはまだ出会ってなかったけれど、
あたしはこの言葉に共感できた。
「志保?着替えた?」
「あ、うん…すぐ行くよ。」
「久しぶりやね。」
「そうだね。」
「で、仕事どうなん?」
「順調…と言いたいけど最近忙しくって。」
「大変やなぁ。」
「准一は?」
「こっちも大変」
「今日、来てよかったの?」
「うん、必死に頑張ってんで。」
「…ありがとう。」
「メールとか電話…毎日せぇへんでいいの?」
「大丈夫だよ。」
「無理…とかしてない?」
「してないよ。
今の恋愛、ものすっごく楽しんでるから!」
そう言ったら、准一は首を傾げた。
たぶん、意味がわかってないのだろう。
「准一は、寂しいの?
メールも電話もしなかったら。」
「そりゃ、寂しくないって言ったら嘘になるけど…」
「けど?」
「俺も今の恋愛楽しんでるから。」
「………」
「志保が言ってんの、アレやろ?
古文の…何とかってやつ。」
「…うん。」
「俺もあれ共感出来るわ。
昔はメールどころか電話もなかったもんな。
だから相手を恋しく想うのも恋愛の素晴らしさだって。
今はそんなこと思わへん人が多いもんな。」
「古文の先生にそう言われたとき、
痛いとこ突かれたなぁって思ったの。
しょっちゅう相手にメールとか電話とかして
束縛するのは、自信がないからだって。」
「じゃあ俺らは自信があんねんな?」
「あたしはそう思ってるよ。」
「俺も、そう思ってる。」
あたしたちは笑った。
何がおかしいっていうわけでもないのに
あたしたちは笑った。
「志保、これプレゼント。」
「ありがとう。」
周りの人から見ると、あたしたちは変わっていると思われるかもしれない。
でも、それがあたしたちなのだ。
他人と違ってもいいじゃない。
あたしたちは、幸せなのだから――
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何か意味分からない文章になってしまいました(汗)
日本だけなんですよね、女の子からバレンタインにプレゼントを渡すのは。
確か外国はどっちからっていうのは決まってなかったような気がします。
で、古文のことなんですが、本当に授業で先生に言われたことを書きました。
こんなカップル…いるのかな(苦笑)
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