『桜並木』
登場人物:松宮志保、岡田准一
(設定は前と一緒。)
4月にもなると、もう冬の寒さはなくなり、
時に暑く感じるときもある。
でも、そんな暖かさが私は好きだったりする。
今日の天気は雲1つない快晴。
見上げると、桜が咲き誇っている。
そんな春の1日。
「綺麗だなぁ…。」
思わずそう呟く。
この前切ったばかりの髪が風に靡く。
そっと目を瞑ると小鳥のさえずりが聞こえてくる。
都会にもこんなに自然があるのだと、今更気付く。
〜♪〜〜♪〜〜〜♪
何処かで携帯の着メロが鳴る。
聞き覚えのある音。
「私だ…。」
ディスプレイを見ると、“新着メールあり”の文字。
開くと、待ち合わせている准一からだった。
『口、開いてんで。』
そう短文で書かれていた。
どうやら私は目を瞑りながら口を開けていたらしい。
恥ずかしくなって、准一がいると思われる辺りを見渡した。
「後ろ!」
声のしたほうを振り向くと、ニッコリ笑った彼が立っていた。
「准一!遅いよ!」
私は思わずそう叫ぶ。
「遅くないって。ちゃんと時間通り来たで。
でも志保が目瞑って口思いっきり開けてるから、声かけられんかってん。」
苦笑いしながら、准一が言った。
「笑わないでよ。」
少し拗ねてみる。
「悪かったって。…少し散歩しよっか。」
「うん。」
2人で桜並木の下を歩く。
ふいに准一が私の手を握ってきた。
手を繋ぐのは初めてじゃない。
でも、ドキドキして。
准一の手をぎゅっと握る。
准一も握り返してくれる。
たったそれだけのことが、すごく嬉しい。
そう思って、私は准一の腕に寄り添った。
「どうしたん?」
「なんでもないよ。」
「変な志保。」
「変じゃないもん。」
『手を繋ぐと、安心する。』
この前、准一にそう言った。
「なんで?」
って、准一はすぐ返してきた。
「だって、1人じゃ手を繋ぐことなんて出来ないでしょ?
だから、私は1人じゃないんだって思えるの。」
そう言ったら准一は笑ったよね。
笑いながら、そっと髪を撫でてくれて、
「心配せんでも、志保は1人ちゃう。
俺がおるから。」
って、言ってくれたよね。
その言葉、すごく嬉しかったよ。
私も傍に准一が居てくれるって、ずっと思ってるよ。
「志保。」
「何?准一。」
「……なんでもない。」
「何それ(笑)言ってよ。」
准一はちょっと赤くなりながら、立ち止まった。
「准…?」
「……っか。」
「え?」
桜の花びらが風に吹かれて舞っている。
私は准一の言ったことが気になった。
「志保、今度の休みは何しよっか。」
「何でもいいよ。」
准一が傍にいてくれるなら。
そう言うと、准一が真顔で私の顔を見る。
「准一?」
「なぁ志保。」
「ん?」
「…髪切った?」
「………」
今頃気付いたの!?
「ちょ…志保!?」
私は怒ったフリをして、先に歩き出した。
後ろからは、准一が「ゴメン」と言いながら、追いかけてくる。
たったそれだけのことでも嬉しかったりする。
ねぇ、准一。
また来年もこうやって桜並木を散歩出来るかな?
ううん。
来年だけじゃなくって、これからも。
2人で手を繋いで歩きたいな。
「志保」
「ん?」
「また来ような。」
「…うん。」
どうやら、准一にも伝わったみたい。
春はまだ始まったばかり。
そんな4月の1日。
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これ、本当は書いたの3月の終わりでした。
4月に送る予定だったけど、送れなかった…。
季節はずれですみません。
こっちが第一作目で、前のが2作目です。
どっちかというとこっちの方が気に入ってたり。
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